「昆布屋女将の挑戦ブログ」のきっかけになった、一昨年のフランス訪問
その時、日本食や日本食文化、日本の食材がかなり浸透していることに大変驚きました。
来年の1月に訪仏することが決まり、
パリの日本食事情について当時を思い返し回顧録をご紹介したいと思います。
コロナ渦で遠出もままならない今だからこそ、
ちょっとした旅行気分でお読みいただけたらと思います。
世界的な日本食ブームと言われて久しいですが、
パリ、特にオペラ座界隈には、日本食関係のお店が沢山ありました。
街中で目にした代表的なものは
日本食レストラン、寿司、ラーメン、うどん、おにぎり、
みそ汁、日本酒、抹茶、ゆず、山椒、海苔、お弁当
等々でしょうか!
それぞれ私が感じた事と共にお伝えいたします。
Contents
日本食レストラン
一番驚いたのが、5つ星の上をゆく最高級カテゴリー”パレスレベル”認定を受けた
ホテル『Le Royal Monceau,Raffles Paris』の1階に日本料理レストラン
『Matsuhisa Paris』がオープンしていたことです。
店内は広く、カウンターの向こうには多国籍のすし職人たちが
あわただしく働いていました。
驚くことに、お客のほとんどがフランス人
パワーランチで仕事の打ち合わせをしているテーブルが多数ありました。
私は照り焼き弁当を注文。
お味噌汁もついています。
食べてびっくり、想像していたお味とは違いました。
このレストランは和食のスタイルに南米料理のエッセンスを加えてあります。
チリソース味の焼き鳥でした。
驚きましたが、美味しくいただきました。
昆布普及活動のため、事前にメールを送り面談を依頼していたのですが、
返信はありませんでした。
ダメ元で料理長の所在を確認したところ、
今日から夏休み明けで出勤しているとのこと。
しかし、ラッキーにもお話をする機会をいただきました。
遠藤シェフは北海道の出身で、夏季休暇を取り北海道に帰っていたとか。
だから返信がなかったのですね。
日本では馴染みのない1か月ほどの夏休み休暇を取ることも最初は抵抗があったそう。
日本でも導入されるといいですね。
当然昆布で出汁を取ってらっしゃいますが、
うちのお薦め昆布をご紹介させていただきました。
1月にも是非訪問して、お渡しした昆布について
感想をおうかがいしたいと思っています。
覚えて下さっていることを祈ります。
お寿司
お寿司屋さんは500mに1軒はあったようなイメージです。
本当に沢山のお寿司屋さんがあったのですが、
ほとんどテイクアウトがメインのお店で、
イートインは2テーブル程という感じです。
お寿司屋さんといえど、中国系、韓国系の経営者がほとんどで、
日本語は通じません。
日本食ブームで増えたお寿司屋さんですが、
過当競争で潰れるお店も結構あるようです。
見つけられなかったけど、
日本人鮨職人がにぎるミシェランの星を取った高級鮨屋もあり、
かなりの人気だとか。
*写真はイメージです。
こんな感じのマグロとサーモンのにぎりと寿司ロールが多かったです。
ラーメン
パリのオペラ座辺りに多くのラーメン屋さんがあるのですが、
至るところで長蛇の列です。
日本のラーメンチェーン店の名前もチラホラ、
タクシーから見える行列ができているお店のほとんどがラーメン屋さんでした。
ラーメン屋さんの中でも異彩を放つのが「SUPU RAMEN」
フランスを代表する三ツ星シェフのギィ・サヴォア氏が開店させたラーメン屋さんなんです。
外観は素敵なカフェのよう、
店内はラーメン屋さんとは思えない、お洒落でポップな雰囲気です。
何で出汁を取っているのか興味津々で、
こちらのお店には足を運んでラーメン屋をいただきました。
幸運にも、カウンター席に案内され、
ラーメンを作っている様子をうかがうことができました。
通訳として同行してくれた斎藤さん、
勇敢にも忙しそうにラーメンを作っているシェフに話しかけ、
出汁について聞いてくれました。
記憶が定かではありませんが、
確か日本でいう煮干しを大きくしたような魚やお肉で出汁を取っていると教えてくれました。
私たちが思うラーメンとは違いますが、確かにフレンチ風ラーメンでした。
とっても美味しかったこと今でも覚えています。
昆布の販路拡大のための渡仏です、私たちは常に昆布を持ち歩き、
機会があれば飛込営業も厭いませんでした。
シェフの手がすくのを待ち、熱く昆布出汁ことを語り、
サンプルと名刺を渡してきました。
シェフも興味深く聞いてくれていましたが、残念ながら連絡はありませんでした。
(あっ、シェフと言っても、ギィ・サヴォア氏ではありませんよ。)
なかなか勇気のいる行動でしたが、
昆布と言う美味しい出汁が取れる海藻が、
日本にあるんだということを認識していただけたかな。
最初の一歩です。
うどん
ラーメン屋さんには及びませんが、うどん屋さんにも行列ができていました。
うどん屋さんと言えば、昆布とかつお節の出汁です。
こちらも非常に興味津々で、並んで食べてきました。
「十兵」さんの看板メニュー「十兵うどん」は豆乳と白みそのスープで、
まろやかでとても美味しかったです。
他のメニューはかけうどん、月見うどん、たぬきうどん、天ぷらうどんなど、
メニューがフランス語で詳しく説明されていること以外は、
ちょっとおしゃれな日本のうどん屋さんと変わりません。
澄んだうどん出汁も美味しくいただきました。
驚くことに、日本人は私たちだけ、
食べている人も並んでいる人も全員フランス人でした。
ここでも日本食の浸透具合に驚きです。
もちろんこのお店でも営業活動です。
ただ、お店がとても忙しそうだったので、料理長とは話すことができず、
スタッフの方にサンプルと名刺を渡しただけでした。
おにぎり
ここ最近トレンドになってきているのがおにぎりです。
一昨年はそれほどでもなかったように思いますが、
エッフェル塔のすぐ近くの日本文化会館内にある「国虎屋」では、
おにぎりが置いてありました。
行った日には残念ながら売り切れていました。
「国虎屋」さんは30年前、パリにオープンした老舗のうどん屋さんです。
そこで、カップうどんを注文してみました。
そのカップうどんに、ちょっとした衝撃を受けてしまいました。
何と、TENUKI(手抜き) UDON とカップに書かれたその中味は、わかめとお揚げとねぎのお味噌汁にうどんが入っていました。
インスタントカップみそ汁うどんでした。
想像できるお味でしたが、馴染みがなく不思議な感じでした。
「国虎屋」のカップうどん
今、パリでおにぎりと言えば「おむすび権兵衛」、
おむすびってなんとなく、懐かしく、柔らかい響きでいいですね。
当時も名前は聞いていましたが、行けませんでした。
今回は是非行ってみたいと思います。
その時には、佃煮昆布を持って営業に行ってきまーす。
パリで人気のおにぎり屋さん「おむすび権兵衛」
みそ汁
「フランス人はみそ汁好きだから」
私にとっては「本当なの?噓でしょ!」となるような衝撃の一言を、
在日フランス人向けに開催した、「昆布だしテイスティングワークショップ」で耳にしたのでした。
確かに、ワークショップで作ったみそ汁はフランス人に大変好評でした。
今年はコロナ禍でおにぎりの売り上げが絶好調だとか。
おにぎりと一緒に食べたいのは、お出汁が効いたお味噌汁。
これからのフランスの食のトレンドにお味噌汁が名を連ねるかもしれませんね。
もちろん、美味しい昆布とかつお節の合わせ出汁で。
*株式会社浪花昆布にて 「昆布だしテイスティングワークショップ」
日本酒
これは説明の必要はありませんね。
高級フレンチレストランでも
ソムリエが料理に日本酒をペアリングして
提供する機会が急増していると言われています。
日本食ブームで日本食レストランが増えたから、
日本酒の消費量が増えたのではないのです。
フランス人ソムリエが、フレンチの一皿に最高に合うお酒を選ぶための
選択肢の一つとして、日本酒が注目を集めているのです。
私にとってフランスのイメージは、
自国の文化に大いなる誇りを持っていて、
堅物でなかなか他国の価値観を受け入れないと思っていました。
しかし、本当に良い物だと認識すると受け入れ、自国の文化と融合させ、
相乗効果により、より素晴らしい物を作り上げています。
実はフランス人は、非常に柔軟な感覚を持ち合わせているのではないでしょうか?
美味しい物を追い求める食に対する貪欲さと斬新さは、
世界一の美食の国であり、食のトレンドを牽引している所以ですね。
抹茶
抹茶は、言わずと知れた世界的に拡散している代表的な日本の食材ですよね。
フランスにおいても漏れなく抹茶は人気でした。
この渡仏をきっかけに取引が始まったUMAMIさんが運営するカフェは
「UMAMI Matcha Café」と言い、まさに抹茶を全面的に押し出したメニューが沢山ありました。
抹茶ラテを注文したのですが、安定の美味しさでした。
店内には、日本の食材の写真が沢山飾ってあり、
食材への愛情を感じる生産者の皆さんの笑顔が印象的でした。
ゆず
「UMAMI Matcha Café」に飾ってあった写真の多くはゆず農家のものでした。
日本文化会館では、四国のお遍路さんが展示されており、
中でも高知県が主に取り上げられていまいた。
フランスでゆずがここまで認識されたのは、
ゆずの産地である高知県の方々が頑張って売り込んだためでしょうか?
「ゆずは日本で出会う機会より、フランスで出会う機会の方が多いのでは?」
と思い驚くほど普及していました。
フレンチのソースにも使われていたり、サラダのドレッシングがゆず味だったり・・
もちろんゆず味スイーツも沢山ありました。
日本ではあんまりゆず味スイーツって見かけないなと思いながら、
ここまでフランスの食文化に取り入れられていることを嬉しく思いました。
しかしながら、衝撃的な事実を聞かされることになったのです。
なんと、ゆずがあまりにも人気過ぎて、フランスで栽培を始めたそうなんです。
ゆずの輸出促進のため、高知県頑張ったのに・・・
複雑な思いを抱いたのは、私だけではないように思います。
「SUSHI」と言う日本食を紹介する雑誌です。
なななんと、ゆずの隣で紹介されている昆布の佃煮は
「佃真」の根昆布煮と天上昆布ではありませんか。
山椒
山椒はフランスでも人気で、農家から直接空輸していると聞いていました。
フレンチにも取り入れられ、あのピリッとした辛みが癖になるんだとか。
フランスの食材にはないパンチ力が山椒にはあるんですね。
残念ながら、山椒を取り入れたフレンチには巡り逢えませんでしたが、
山椒入りチョコレートを見つけました。
意外と合うんですよね。
濃厚なチョコレートにピリッとした辛み、確かに癖になりそうでした。
兵庫県神戸市に所在するわが社は、
兵庫県産の朝倉山椒を使った商品も多数のあり、
今回の渡仏の際には、色々と紹介しようと思っています。
海苔(海藻)
少しずつですが、おにぎりやお寿司の流行りと共に、認識されてきたのが海苔です。
おにぎりに巻かれていた海苔も、最初は包装紙と間違えられ、はがされていたそうです。
海藻を食べる習慣のないフランスでは、海藻は海の厄介者とされて来ましたが、
栄養価も高く、近年少しずつ見直されてきているようです。
その代表的なもので、人気となっているのが海藻バターです。
日本でも人気が出てきていますよね。
2019年Salon des Saveursにて
この海藻は一体何の海藻なのかなと思って調べたのですが、
アルグ(海藻)としか書いてありませんでした。
海藻を食べる日本で海藻と言えば、
昆布、海苔、わかめ、ひじき、アカモク等々沢山の種類がありますよね。
アルグとしか表示していない・・・
ここでも食文化の違いを感じました。
こちらで販売されている海藻バターの海藻はわかめと書かれていますね。
展示会で出会った海藻バターを作っているご夫婦です。
タラソテラピー発祥の地、ブリュターニュ地方から来られたそうです。
やはり、フランスで海藻と言えばブリュターニュ地方なんですね。
お弁当
最後にお弁当です。
オペラ座界隈で、お弁当屋さんを見つけました。
非常にかわいい看板が印象的でした。
フランスでは、お弁当の様な概念はなく、
フランスパンにチーズやハムを挟んだとてもシンプルな物だそうです。
そんなフランス人にとって、
いろんなおかずが色とりどりで1つの箱に納まっているお弁当は衝撃的だったそうです。
最近ではおしゃれなお弁当箱も人気だそうです。
「BENTO&GO」という日本人経営のお店がかなり流行っているそうです。
コロナ禍でお弁当文化はより一層フランスの食文化に入り込んでいるのでしょうね。
昆布屋女将の想い
色々と記憶を探りながら書きましたが、
本当に日本の食文化がフランスに受け入れられていることが分かると思います。
昆布だしは日本料理の縁の下の力持ち、
それは、日本料理に限ったことではないんです。
何を隠そう、私が昆布出汁に目覚めたのは、
昆布とお野菜とキノコのポタージュスープをいただいたからなんです。
本当に美味しくて、目から鱗とはこのことかーと感動しました。
昆布出汁は色んな素材の底味を上げてくれる本当に素晴らしい食材です。
私は、昆布出汁を使ったビシソワーズをよく作るのですが、
それが本当に美味しくて・・・
自画自賛ですが、毎回感動しています。
そんな昆布も収穫量も減り、
昆布屋さんも減り、
売り場でも片隅に追いやられて・・・
とっても大切な食材なのにと悲しくなってしまいます。
食に貪欲なフランスの方々に昆布出汁の素晴らしさをお伝えして、
また、日本の方々からも見直していただけたら嬉しいです。
今後このリストに昆布が名を連ねることを目標に、
昆布普及活動を頑張っていきたいと思っています。
応援お願いしますね。
小濱 洋子
-
株式会社浪花昆布 常務取締役
1994年株式会社浪花昆布の2代目小濱敬一と結婚。一男一女の母。
2002年株式会社浪花昆布入社、初代女将の営む佃真六甲本店で女将修行をスタート。
長女がフィギュアスケートを始めたため、仕事や家事、スケートの送り迎えにと目まぐるしい日々を送っていた。
娘のスケート引退を機に、本格的に社内業務に携わる。
ぐるぐる昆布カフェの企画、商品開発、開店準備を担う。
現在は、フランス輸出業務に力を入れている。
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