兵庫県の「中小企業海外展開支援事業助成金」をいただき
フランスへの輸出の道筋ができました。

この助成金について知らなかったら、
出来ないと思って申請していなかったら、
このような展開にはなっていなかった・・・

感謝の気持ちも込めて、助成金の話を織り交ぜながら
お伝えさせていただきたいと思います。

2019年11月28日、
大きな志を持ってフランス、シャルルドゴール空港に降り立ちました。
今思えばちょうどコロナ禍直前の訪仏。

街は、クリスマスシーズンに入り、
シャンゼリゼ通りの並木も赤色のLED電球で美しく飾られていました。
とても華やかで、沢山の人で溢れていました。

その美しい景色を眺めながら、この地に立っている理由を考えると、
何て大胆な挑戦をしてしまったのだろうか、本当に私にできるのだろうか、
いや、きっとできるはず、上手くいく・・・
期待と不安と恐怖が入り混じった複雑な感覚を
今でもはっきり覚えています。

今年度も兵庫県の『中小企業海外展開支援事業助成金』に選んでただき
2度めの訪問を1月にいたします。

それに先立ち、
一昨年の『フランスにおける昆布出汁を使った食品の販路開拓事業』を
思い起こし、今年度の事業に活かしていきたいと思います。

まずは、最初にどうしてこの事業をしようと思ったのかと言うことをお伝えします。

 

Contents

1,海外展開のきっかけ

事の始まりは2017年の『ぐる×ぐる昆布カフェ』に遡ります。

昆布大使で昆布料理の先生でもある、坂本萌恵先生の昆布ポタージュに魅了され、
それを多くの方に食べていただきたく期間限定の昆布カフェを開店しました。

昆布とカフェと言う異色の組み合わせが目に留まったのか、
色々なメディアからの問い合わせや、取材がありました。
このことについては、また別の機会に書かせていただきます。

この『ぐる×ぐる昆布カフェ』には驚く程沢山の方に来ていただきました。
皆さんが美味しいと食べて下さっていたことを懐かしく思います。

その中で、友人でありフランス語の通訳をしている斎藤さんが、
何人かのフランス人の方を連れて来てくださいました。

その方々が揃って、美味しい、フランスで売ったらどうかと
後日企画書まで持ってきてくださいました。
この昆布ポタージュは、動物性の物は全く使用せず、
野菜とキノコと昆布のみなので、ビーガンの方にも召し上がっていただけます。
近年、フランスでもビーガンの方が増えているらしく、
是非フランスに紹介したいと言っていただきました。

しかし、全くそんなことを考えもしていなかったので、
非常に嬉しかったのですが、驚き以上に戸惑いの方が大きかったことを覚えています。
もちろん、投資金額も大きく、一歩を踏み出す勇気は
その時の私には残念ながらありませんでした。

そんな時に、ひょうご海外ビジネスセンターが中小企業向けに
海外展開支援事業補助金を出してくれる制度があることを知ったのでした。

最初は、仕事でフランスに行けるかも知れないという
勢いと好奇心で突き進んでいきました。

2,兵庫県の中小企業海外展開支援事業

まずは、ひょうご海外ビジネスセンターの制度、
『中小企業海外展開支援事業助成金』についてお伝えしたいと思います。

ひょうご海外ビジネスセンターは
公益財団法人ひょうご産業活性化センターの中の1つの部署になります。

『公益財団法人ひょうご産業活性化センター*では、県内中小企業の海外進出を支援するため、投資リスクの高い初期段階での海外事業展開に関する調査費の-部を助成します。』
(兵庫県ホームページより)

*公益財団法人ひょうご産業活性化センターは
中小企業の経営の革新及び創業の促進、
経営基盤の強化等のための諸事業並びに地域経済の活性化に関する事業を行い、
兵庫県の産業経済の発展を図ることを目的とした財団です。
(ひょうご産業活性化センターホームページより)

要するに、兵庫県が海外展開をしようと考えている中小企業に対して、
支援してくれるということです。
最大助成 100万円 補助率1/2
(200万円の事業に対して100万円補助していただけます。)
結構な金額ですよね。

海外展開を考えている中小企業にとって強い味方です。
こちらの助成金は、基礎調査と実証調査があり、
1年目に基礎調査、2年目に実証調査と、2年に渡って助成いただけます。
(申請は年ごとで必要になりますし、
1度採択いただいたからと言って2年目の審査が優位になる訳でもないようです。)

審査内容は書類と面接です。

3,書類審査

まずは書類に書く内容です。

1 事業名

このような事業展開を行うということを少し細かく書きましたが、
交付の際にはもっとざっくりとした事業名に変更になっていました。
変更して頂いていたおかげで、もっと広がった活動ができたと思います。

2 対象国・地域

こちらは説明不要ですね。

3 助成対象事業のこれまでの取組

この助成金を申請するに至った経緯や思いを記入しましたが、
300字以内にまとめないといけません。
この300字と言うのが曲者です。
思いがたっぷり詰まっているので、なかなか300字には納まりません。
この文字数を抑えるのに大苦戦しました。

4 助成対象事業の現状と課題

昆布出汁について伝えたいと言う思いのみで申請を考えていたので、
現状と課題という項目をどう書けばいいのか非常に迷いました。
改めて、2019年の申請書類を確認すると、
この時に考えていたことが鮮明に蘇ってきました。
思いが先に立ってしまう私にとっては、少し書きにくい項目でした。

5 課題解決に向けた海外展開の狙い

この項目こそ、思いを伝えるところとなります。
当時から、地球温暖化や、海の環境問題で昆布の収穫量が減っており、
危機感があったため、そのことについても言及していました。
フランスで売れたらよいと言うことだけではなく、
日本には、美味しい出汁が取れる海藻があるってことを知って欲しい。
そして、ブーメラン効果で日本でも見直されることを願っての事業です。
熱く、熱く思いを込めて書きました。

6 事業に関する海外展開の状況

現在の海外展開の有無について選択する項目です。
輸出の経験はあるか、海外拠点はあるか、などです。

7 計画の内容・スケジュール

この項目は同行して頂いた通訳の齋藤さんにお願いしました。
このスケジュールを組み立てるために、
日本食材インポーター、日本食材店、プロモーター、日本食材専門誌の編集者、
現地で評判の店舗やレストランの担当者や料理長、
日本の伝統品とのコラボを企画している大学教授等
考えられる、ありとあらゆるところにメールを送り
アプローチしてくれました。
約10日間、実質8日で10件以上の商談スケジュールでした。
実際は、この商談の合間に何件もの飛込営業もしています。

8 事業実施予定期間

市場が一番活気付くクリスマス前に期日を設定しました。
『Salon de Saveurs』と言う日本の食材コーナーも出展する、
B to C 向けの展示会も見学したいと思いもあり、
最大限動ける日程で設定しました。

9 展示会情報(展示会出展の場合)

この助成金は展示会出展に対しての申請が多いようです。
『Salon de Saveurs』の日程に合わせたのは、
次に申請する際に、出展の可能性もあるかなという思いからでした。

10 助成事業に期待される成果

この項目は、数字としての期待成果も記入した方が良いそうです。
申請書には数字が要求されますが、毎回頭を悩ませるところです。
何回も書いていますが、
私の場合、昆布について知って欲しいという思いのみで突き進んでしまうため、
具体的な表現、評価が苦手のようです。
SDGsを絡めた期待される成果も書きました。

11 他の団体等からの助成、支援の活用予定

並行して、他団体からの助成金や支援も活用できることもあるようです。

12 事業収支決算書

収入の部 ー 助成金と自社負担金を記入します。

支出の部 ー 各項目で見積もりが必要になってきます。
航空券は、アップグレードできないエコノミーのみです。
宿泊費や通訳費は都市によって最大費用が決まっています。

色々と取り決めがあり、対象にならない経費も多くあります。
その代表的な物がコンサルティング料です。
以前は認められていたそうですが、不正受給が何件かあり、対象外になったそうです。
税金から支給していただくので、
正しく、効果的に使いたいものです。

このような内容に沿って申請書を提出しました。
A4で6ページ、さほどボリューム感はないように思いますが、
結構早い段階から、齋藤さんとミーテイングを重ね、
そもそものところから話し合い、期限ぎりぎりまで考え提出しました。

待つこと約3週間、
書類審査を通過したと担当の方からご連絡をいただきました。

書類審査通過を喜ぶのもつかの間、次は面接審査です。

4,面接審査

面接審査時間は15分間
2分間での事業計画アピールと質疑応答です。

指定の時間に行くと待合室に通され、
他の企業の方もいらっしゃいました。
2人、3人で来られている企業さんもあり、
1人で挑んだ私は、一気に不安に・・・

いざ面接へ

面接室には、面接官3名、スタッフも約4名いて、全員男性です。
シーンとした場の雰囲気に一瞬たじろぎましたが、
言いたいことをまとめ、画像も用意し、一生懸命アピールしました。
質疑応答では何を聞かれたのか、緊張し過ぎて全く覚えていませんが、
かなり具体的なことを聞かれたように思います。

物凄く熱く、熱くこのプロジェクトについて語ったのですが、
面接官の方々はノーリアクション・・・
芸人がよく言う、「滑った」ってこんな感覚なのかなと思ったことを覚えています。
後から考えれば、審査なので面接官として当然の態度なのですが、
思った以上の疲労感と焦燥感があったことを覚えています。

5,審査結果

結果は全く予想できませんでしたので、
待っている時間が非常に長く感じられました。

面接から待つこと約1週間
担当の方からのお電話と共に内定通知書が届きました。
その時は本当に嬉しかったです。

でも、本当はここからがスタートです。

2年前の『中小企業海外展開支援助成金』に申請したことを
思い起こしながら、提出した申請書の内容を確認しながら書きましたが、
当時の思いが蘇りました。

6,フランスへの道

この助成金での当初の目的は、
昆布ポタージュをフランスで広めたい。
と言うことでした。

昆布ポタージュを面談いただいた方々に召し上がっていただくと、
皆さんにとても美味しいと言っていただきましたが、
実際のところ、昆布出汁についての知識もないところで、
作って、広めていくことは非常に難しいと感じました。

しかし面談には、昆布ポタージュだけでなく、
出汁昆布や汐吹昆布、だししお等の商品も持参し臨んだため、
その商品に興味を持って下さった2社と取引ができるようになりました。

コロナ禍で、運送料の問題もあり、まだまだ厳しい状況下でありますが、
助成金のお陰で、フランスのお店の棚に、うちの昆布を並べることができました。

まだ自分の目で見たことはありませんが、
想像しただけでワクワクしてきます。

助成金があったからこそ、挑戦できたことだと思います。

1度目の申請書類に目を通したことで、
初心に触れ、またそこから進化した新たな思いもあり、
1月の渡仏に向けて、
ギア全開で頑張っていきます。

助成金申請で感じた事や内容についてお伝えいたしました。

また、フランスでの営業活動についても報告させていただきます。

 

 

 

 

 

小濱 洋子

Yoko KOHAMA
株式会社浪花昆布 常務取締役

1994年株式会社浪花昆布の2代目小濱敬一と結婚。一男一女の母。
2002年株式会社浪花昆布入社、初代女将の営む佃真六甲本店で女将修行をスタート。
長女がフィギュアスケートを始めたため、仕事や家事、スケートの送り迎えにと目まぐるしい日々を送っていた。
娘のスケート引退を機に、本格的に社内業務に携わる。
ぐるぐる昆布カフェの企画、商品開発、開店準備を担う。
現在は、フランス輸出業務に力を入れている。